発達障害の方の障害年金請求

「発達障害を持ち、障害年金の受給を希望している方」のために、障害年金の基本情報、対象条件、受給金額、申請の手続きなどを詳しく解説します。「発達障害者としての申請の際の注意点」も併せてお伝えします。

障害年金もらえる?

 

◎ 障害年金のよくある誤解

多くの方が、発達障害の場合、障害が軽度と認識され受給できない、または、仕事を持っている場合に受給資格がないと誤解しています。

しかし、発達障害が日常生活や職場での作業を妨げる場合、障害年金を受ける資格があることがあります。

仕事を持つ人も、障害による業務上の困難が生じている場合、受給の対象となる可能性があります。

 さらに、障害年金の受給資格がない場合でも、障害手当金の受給が考えられる場合があります。

 

◎ 障害基礎年金と障害厚生年金

この記事を通して、障害年金に関する正確な情報を得て、ご自身が受給資格を有しているかどうかの確認をおすすめします。

障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」という2つのカテゴリーが存在します。

 

◎ 障害手当金

そして、障害の度合いが軽く、障害年金の資格がない場合であっても、「障害手当金」の申請が可能です。

どの年金や手当金を受けられるかは、厚生労働省が設定する障害の等級基準に基づいて判定されます。

それぞれの詳細について、続けて解説します。


1-1 障害基礎年金とは

障害基礎年金は、障害等級1級・2級を有する方が受給できる年金制度です。

「国民年金加入者」という条件があるため、20歳から60歳までの日本居住者がこの年金の対象となります。

20歳より若い時期や、60歳を超えてから65歳に至るまでの間(国民年金の非加入期間)も含まれます。

日常生活に困難をもたらす子供時代の事故や疾病、または先天的な疾患や障害でも、1級・2級の障害等級に適合するならば、この年金の受給資格があります。

1-2 障害厚生年金とは

障害厚生年金は、障害基礎年金に上乗せされる年金です。

厚生年金の加入期間中に障害を負った方で、1級・2級の障害等級に該当すれば、この年金が上積みされます。3級の場合、障害厚生年金のみの受給となります。

この制度は、厚生年金の加入者を対象としており、国民年金のみの加入者は適用外です。

1-3 障害手当金とは

「障害手当金」は、障害年金の対象等級には該当しないが、軽度の障害を抱える方向けの一時的な支援金です。

障害等級3級未満の軽い障害を持ち、該当の疾病や事故から5年以内に回復した場合、この手当金の受給資格があります。

つまり、障害年金の基準外の障害を持つ方も、障害手当金を得ることが可能です。

 

◎発達障害のある方も、障害年金を受け取れる可能性があります。

 

発達障害は脳の先天的な機能障害であり、ケガや病気だけでなく、先天的なものでも障害年金の対象となり得ます。

発達障害による日常や職場での困難が障害年金の要件を満たしていれば、受け取ることが可能です。

2. 発達障害の障害等級

厚生労働省により、障害の程度を示す「障害等級」が定められています。

この等級は医師の診断や日常生活・労働能力をもとに決定されます。

障害者手帳の等級とは異なるものなので混同を避ける必要があります。


障害等級1級

社交性やコミュニケーションの大きな欠如があり、常時援助が必要。

障害等級2級3級

一定の援助が必要なレベルの社交性やコミュニケーションの問題がある。

女性社労士

等級の決定 については、具体的には、感覚過敏や対応の難しさ、他者とのコミュニケーション困難などが考慮されます。 医師の診断書にこれらの症状や困難が詳細に記載されていることが、障害等級を受ける上で重要となります。 また、発達障害とともに精神疾患がある場合、両方の症状が総合的に考慮されて障害等級が認定されることもあります。

 

障害等級は一度認定されても、症状の変化に応じて変更される可能性があります。 症状が悪化した場合の手続きや、軽減した場合の給付金の変動も考慮する必要があります。


3. 障害年金を受給するための条件の概要

障害等級の条件

障害等級が1級、2級、または3級に該当すること。

1級・2級では障害基礎年金と障害厚生年金が支給され、3級では障害厚生年金のみが支給される。

初診日の条件

障害の原因となる病気や怪我の初診日に関する一定の条件を満たすこと。

 

保険料の納付の条件

障害の原因となる病気や怪我の初診日に関する一定の条件を満たすこと。

 

※成人前の障害が認められた場合、保険料の納付条件は対象外となる。

(20歳前に障害が認められる条件)


4. 発達障害を持つ方が注意すべきポイント

初診日の特定

発達障害の症状が初めて診断された日を正確に特定すること。その日が20歳前である場合、特定の条件が適用される可能性があります。

診断の詳細

発達障害の診断時に、どのような評価やテストが行われたか、症状の重度や特性を正確に記録しておくことが重要です。

障害等級の確認

発達障害の症状や困難の程度に応じて、どの障害等級に該当するかを専門家と確認してください。

継続的な医療フォロー

発達障害は生涯にわたる特性であり、継続的な医療フォローやサポートが必要な場合があります。障害年金の申請や再評価の際に、過去の医療履歴やサポートの記録が役立つことがあります。


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障害年金の申請や受給に関しては、複雑な手続きや条件があるため、日本年金機構や専門家に相談することを推奨します。

発達障害の特性や困難を適切に伝え、必要なサポートや情報を受け取ることが重要です。

5. 障害年金を受け取る際の重要なポイント

発達障害を抱える方が障害年金を受け取るためのポイントを2つご紹介します。

ポイント1 発達障害の障害等級の判定について

「障害認定基準・認定要領」において、発達障害は『自閉スペクトラム障害(ASD)、アスペルガー症候群や学習障害(SLD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)など、脳の機能障害に関連した症状が若い年齢で現れるもの』と認識されています。

 

障害の特徴により、社会的な活動やコミュニケーションに問題が生じ、日常生活や職場での活動に制約が出る場合、その制約の程度に基づいて障害等級が決まります。

 もし、精神的な疾患が合併している場合、発達障害と精神疾患の合成的な評価を受けることになります。

 障害の等級は医師の提出する「診断書」に基づいて判断されるため、医師に対して日常の困難や仕事上の制約について詳しく伝えることが大切です。具体的な状況や事例を挙げて説明することを心がけましょう。

 詳細は「2.発達障害の障害等級」をご参照ください。


ポイント2  初診日に関する注意点

発達障害を持つ方で、知的障害や精神疾患の治療経歴がある方は特に注意が要ります。

大人の発達障害の方が精神疾患の治療を受けた後、発達障害の可能性が指摘されることがしばしば見られます。「初診日」にはいくつかのタイプがあるので、注意が必要です。

 

①発達障害のみの場合

初診日は「発達障害と診断された最初の日」となります。

 

②知的障害を伴う発達障害の場合

このケースでは、初診日は「生まれた日」とされます。

 

③発達障害の診断前に精神疾患の診断が出ている場合

このケースでは、精神疾患の「診断がされた最初の日」が初診日となることが考えられます。発達障害の診断を受けた病院と、精神疾患の初診を受けた病院が異なる場合、後者の病院に確認を行うことが必要となります。


6. 障害年金としての受給額

障害年金の受給金額に関して、障害基礎年金・障害厚生年金・障害手当金の3つに分けて説明します。

1⃣  障害基礎年金の受給金額

障害基礎年金の受給額は、障害の等級が

🍃1級であれば年間976,125円、

🍃2級であれば年間780,900円となります。

 ※毎年、受給額は見直されます。

2⃣  障害厚生年金の受給金額

障害厚生年金の受給額は、平均的な報酬額や、厚生年金への加入期間によって変動します。

高収入で、長期間厚生年金に加入していた方は受給額が増える一方、低収入や短期間の加入者は、障害の状態と比べて受給額が減少する可能性があります。このような問題を回避するために、収入や加入期間にかかわらず最低限の受給額が保証されています。

 ※ 障害厚生年金の3級の最低受給保障額は586,300円 

参考:日本年金機構の障害年金ガイド

 

さらに、障害厚生年金の受給者で、障害等級が1級または2級で、65歳未満の配偶者がいる場合、年間224,700円の配偶者加給年金が付与されます。


3⃣  障害手当金の受給額

障害手当金は、厚生年金のサポート金として提供されるため、受給額は平均報酬額や厚生年金の加入期間に応じて変動します。

 ただ、障害厚生年金と同様に最低受給額の保証があり、特に発達障害のある方にとって、大きなサポートとなるでしょう。

 ※年金額の報酬比例額を2倍にした金額が、一時金として提供されます。その際の最低保証額は1,172,600円です。

 参考:日本年金機構の障害年金ガイド

 

初回の無料相談を活用し、問題解決の一助としてください。


7. 障害年金の手続き方法

障害年金を請求するためには、該当者本人やその家族が特定の手続きをしなければなりません。

その具体的な手続きや要求される書類について、以下で説明します。

1⃣  障害年金の申請ステップ

障害年金を請求する際は、指定された書類を特定の場所に提出する必要があります。

 第1号被保険者の場合、ご自身の居住している市区町村役場が窓口となります。

一方、第2号被保険者や第3号被保険者は、年金事務所または年金相談センターを訪れることになります。

 このプロセスは、必要な書類を整理し、提出するという明瞭なものです。

2⃣ 障害基礎年金の請求に際しての書類

手続きを進める上で、いくつかの書類が要求されます。

これらの書類を事前に準備することは、手続きをスムーズに進めるために不可欠です。

以下がその書類一覧です。

 

障害年金の取得に際しての必要書類

年金請求書

 戸籍謄本・戸籍抄本・戸籍の内容証明・住民票・住民票の内容証明書から1つを選択

 障害の認定日より3ヶ月以内に作成された医師の診断書(指定のフォーマットがある)

 治療の履歴などの証明書

 病気や職務の履歴に関する申請書

 年金の受け取り口座情報が記載された通帳やキャッシュカード(名義は申請者と同じであること)

 

上記に挙げたもの以外にも、特定の状況に応じて追加の書類が求められることが考えられます。

8.まとめ

発達障害を持つ方の障害年金の取得について

これまで発達障害を持つ方が障害年金を受け取る際の注意点や手続きについて詳しく解説しました。

ここで、その要点を再確認しましょう。

 発達障害を持つ方でも、一定の要件を

クリアすると障害年金を受け取る資格が生じる

 障害年金の資格がない場合でも

障害手当金の取得が視野に入ることがある

 障害の程度を示す「 診断書 」が、

年金の等級判断に大きく影響する

  年金の対象となるかどうかのキーポイント

として「 初診日 」が重要視される

職に就いていても働き方や職場での配慮の状況によっては、年金の対象と見なされることがある 


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 「手続きの際の難しさ」「診断書の取得方法の不明点」「過去に年金の申請が認められなかった経験」など、不安や疑問を感じる方は、社会保険労務士にサポートを求めることが推奨されます。

初回の相談は無料で受けられるところも多いため、まずはその機会を利用して、必要なサポートを受けるか判断すると良いでしょう。

 当事務所の代表は、発達障害を持つ子の母親であり、また発達障害の悩みを実感してきた経験者でもあります。 

クリニックへの通院経験や診断書の取得方法など、手続き全般に関する知識も豊富です。